粘着テープの構造は、おおまかに基材(表面の支持体)と粘着剤(接着層)の2層に分けられます。
包装・梱包用として使用される粘着テープも用途や環境によって様々な種類がありますが、その最も大きな違いは基材にあります。
重量物を梱包する場合は布(実際は布生地ではなくスフ(スパン・レーヨン)等)を基材にした布テープ、
軽くて小さいものを梱包する場合にはセロハンテープや和紙テープ、
また汎用的に使われているクラフト紙基材のクラフトテープや、
透明なプラスチックフィルム基材のOPPテープなどがよく見られるテープです。
その中でも、段ボール梱包に使用されている包装用の粘着テープは、
クラフトテープとOPPテープの2種類で9割以上を占めると云われています。
段ボール製函機・封函機(封緘機)で使用される粘着テープも、一部の例外を除き、この2種のテープを使用することになります。
クラフトテープ
クラフト紙を基材とするクラフトテープは、日本独特の包装用テープであり海外ではほとんど見られません。
クラフト(kraft)とはドイツ語で「力」「パワー」などの訳で、クラフト紙とは“強い紙”という意味です。
強度のある紙ながら、手で切ることが出来るなど作業性に優れ、比較的に安価であるために、
日本では最もポピュラーな包装用テープです。
手作業で使うクラフトテープは50m巻きの小さなロールですが、製函機・封函機で使用する機械用は500m巻きが一般的です。
(しかし、)製函機・封函機でテープを使い終わって、次のテープをセットするまでは、作業が止まってしまいます。
この交換は人の手を必要とし、最低でも数分間はかかってしまいます。
この交換回数を減らすために多く巻いてあるのが機械用の長尺テープです。
近年ではラインを止める回数をさらに1/2に減らす事が可能な、1,000m巻いてあるクラフトテープを販売しているメーカーもあります。※1,000m巻きのテープに対応できる機械は限定されますので(ご注意が必要です。)
粘着テープは基材と粘着剤に大別されますが、クラフトテープの基材であるクラフト紙の表面には
薄いポリエチレン(PE)のラミネート層があるものが多いです。
粘着剤付きのクラフト紙をロール状に巻くと、クラフト紙の表面と粘着剤がくっついてしまい剝がれなくなってしまい、
使いものになりません。くっつかないようにする為には、背面処理剤という薬剤をクラフト紙の表面に塗りますが、
この薬剤がクラフト紙に染みこまないようにガードするのがポリエチレンのラミネート層となります。
さらにこのラミネート層のおかげで強度やコシ(硬さ)が増しより使い勝手の良いテープとなります。
また、独自の表面処理によってポリエチレンラミネートをなくしたクラフトテープを上市しているメーカーもあります。
ラミネートをしないことによりプラスチックの使用量を削減し、燃焼時の二酸化炭素排出量を削減するとも謳われています。
テープ本体のほとんどが自然由来の材料で構成されている為、バイオマスマークを取得しているメーカーもあります。
クラフトテープの表面はコーティング処理されているため、ツルツルしているものが多いです。
その為にテープの上からボールペンなどで字を書くことが出来ず、マジックで書いても擦れば消えてしまいます。
またこのテープの上にさらにテープを貼ろうとしても、表面処理が邪魔してくっつかずすぐ剝がれてしまいます。
さらにはテープの表面はとても滑りやすく、クラフトテープで梱包した段ボール箱を積み重ねると、
箱同士がすべってしまい荷崩れの原因となってしまいます。
こうしたクラフトテープの弱点を補うのが3機能クラフトテープと呼ばれるテープです。
このテープは、1.字が書ける 2.重ね貼りができる 3.滑りずらい の3つの機能をプラスしたクラフトテープで、
従来のクラフトテープの弱点をほぼすべてカバーしています。
クラフトテープのメリット
- 比較的に強度が高くコシがある。
- 手で切れ、作業性が良い。
- 段ボール開梱時にカッターなどの刃物がいらない。(内容物を傷つけない)
- 基材が紙のため自然由来の材料比率が高い。(環境にやさしい)
→さらに環境に対応しているクラフトテープ
- ラミネート無しタイプ
- 再生紙クラフトテープ
- リサイクル可能クラフトテープ etc
クラフトテープのデメリット
- 水分、湿度に弱い。
- 表面に字が書けない。
- 重ね貼りが出来ない。(重なった部分は剝がれてしまう)
- 表面が滑りやすい。(荷崩れしやすい)
→2.3.4のデメリットを解消するクラフトテープ
- 3機能クラフトテープ
- ラミネート無しタイプ
OPPテープ
OPPとはポリプロピレン(polypropylene、略称PP)を延伸したプラスチックフィルムの事で、
OPPテープはPPテープとも呼ばれます。
PPは汎用的に使われるプラスチックの中でも比較的に強度が高く、耐薬品性、耐吸湿性などにも優れています。
OPPはPPを延伸させることにより強度や透明度がさらにアップしたもので、プラスチックフィルムのため耐水性も備える素材です。
このOPPを基材として粘着剤を塗布したものがOPPテープで、海外では最も使われている包装用テープです。
OPPテープは、クラフトテープよりも幅広い選択肢がありテープの厚み、粘着剤の種類によって様々な組み合わせがあります。
OPPテープの厚みは極薄のものから、強度のある厚手のものまで数種類あります。
最も薄いものは総厚み0.042mmから、0.055mm、0.065mm、厚いもので0.09mmとあり、
厚みが増すほど強度は比例して強くなります。
逆に薄いものほど比較的に安価で、ランニングコストが抑制できます。
この厚みは基材(OPP)の厚み(0.025mm~0.06mm)と粘着剤の厚みからなり、
包装する段ボールの大きさや重さによってテープを選定する必要があります。
OPPテープの粘着剤はゴム系粘着剤とアクリル系粘着剤の大きく2種類に分けられます。
ゴム系粘着剤はアクリル系と比較して粘着力が高い上にいろいろな素材に貼り付けやすく、
また低温環境でも粘着力があまり低下しません。
逆に高温では粘着剤が柔らかくなってしまい、剥がれやすくなってしまう弱点があります。
アクリル系粘着剤はゴム系に比べ安価であるというのが一番の利点といえます。
さらに高温環境や紫外線にも比較的強いという特徴がありますが、プラスチックなどの素材にはくっつきにくく、
粘着力の劣化も速いというデメリットもあります。
またアクリル系粘着剤特有の鼻につくような匂いがあったり、
テープを繰り出す際にはテープの表面から粘着剤が剥がれる時のバリバリッというような大きな音がするなど、
人によっては気になる場合もあります。
OPPテープの巻き数(長さ)は厚みによって異なります。
総厚が0.09の厚手タイプはクラフトテープと同じ500m巻きですが、
薄手のテープの場合は1,000~1,500mとクラフトテープの2~3倍も巻いてあるため
テープの交換頻度も少なくラインを止める回数を抑制できます。
OPPテープのメリット
- 耐水性、耐湿性に優れている。
- 破れにくい。(クラフトテープと比較して耐衝撃性に優れる)
- 透明色の場合、貼り付けた下の文字などが見える。
- 重ねて貼ることが出来る。
- 厚みが薄いタイプでは安価である。
- 厚みが薄いタイプでは巻き数(テープ長さ)が長く、交換頻度が少なくて済む。
OPPテープのデメリット
- 手で切ることが出来ない。(作業性が悪い)
→手で切ることが可能なOPPテープもあります。 - 段ボールを開梱する際にははさみやカッターなどの刃物を必要とする。
→メーカーによってははがす部分に紙テープをつけたり、
テープの先端やサイドを折り曲げるなどして剝がしやすくする機能もあります。 - 独特の匂いがあり、人によっては気になる。
- テープを繰り出す際の音が大きい。
- 厚みが薄いタイプではコシがなく扱いずらい。(作業性が悪い)
- プラスチック素材のため段ボールのリサイクルでは禁忌品とされるケースが多く、
排出前にすべてはがさなければいけない場合もある。
→リサイクル業者や自治体などへの確認が必要
その他のテープ (ガムテープ)
ガムテープというのは一般的な呼び名の“ガムテープ”(略称 ガムテ)ではありません。包装用テープの分野では、クラフト紙など紙基材の片面に水溶性の糊剤を塗布し乾燥させてテープ状にまいたもので、そのままでは粘着性がなく段ボールに貼り付きません。使用する際には糊が塗られている面に水を付けることで、乾燥していた糊に接着力が復活します。切手を想像していただければわかりやすいと思います。余談ですが、このガムテープの発明者はあのトーマス・エジソンです。
ガムテープは紙とデンプン由来の糊で構成されており、そのほとんどすべてが自然由来の素材から成っています。糊を乾燥させてあるので、テープを巻いた際に接する表面側の処理やラミネートが必要なく、段ボールをリサイクル際にもテープを貼ったままで処理することが出来ます。表面処理がないという事で、重ね貼り、表面に字を書くことが可能で、滑りにくく荷崩れもしにくい…とクラフトテープのデメリットがすべて解消されてもいます。
さらに最大の特徴は、表面処理にかかるコストが省ける分だけ、クラフトテープより安価であるという点です。ガムテープは、安くて環境にやさしいという実にいいとこどりな包装用テープなのです。
ガムテープがあまり普及していない原因として、その扱いづらさがあげられます。ガムテープは接着面に水を塗らなければならない為、段ボール梱包に使用する場合は必ず専用の機械が必要となります。手作業で使用する場合でもディスペンサーという、水を塗りながらテープを繰り出す機械が必要です。
自動化する場合では通常の粘着テープ用製函機・封函機では対応ができない為、海外メーカーの機械、特殊製作機や改造機など設備費用(イニシャルコスト)が高額になってしまう場合が多いです。封函機では国内メーカーで標準対応できる機種もございますので、お気軽にご相談ください。
ガムテープの巻き数(長さ)は、通常は180mか360mですが自動機械用として540m巻きも用意されています。ただしテープ同士がくっついていない為、長く巻いてあるとバラバラにほどけてしまう危険性が高く扱いに注意が必要です。
ガムテープ(水貼りテープ)のメリット
- クラフトテープと比較して低コスト。
- 重ね貼りができる。
- 上から字が書ける。
- 表面が滑りにくく、荷崩れしにくい。
- 貼ったまま段ボールのリサイクルが可能
- 一度貼ったガムテープを剥がすと跡が残り、再び貼ることが出来ない為、
無断開封による中身のすり替えや盗難を防ぐことが出来る。 - 低温や高温の環境下での保管でもテープがはがれにくい。
- ほぼすべてが自然由来の素材で、環境にやさしい。
ガムテープ(水貼りテープ)のデメリット
- 水を付けないと貼り付かない。(作業性が良くない)
- 使用する際に必ず機械を必要とする。
- 自動化機械(製函機・封函機)のイニシャルコストが高い。
製函機・封函機(封緘機)で使用できるテープの幅について
包装用テープの幅は一般的な国内の規格は、
25mm、38mm(一部輸入品で36mm)、50mm(一部輸入品で48mm) 、60mm、75mmが標準ですが、
製函機、封函機で使用できるテープ幅は通常38mmと50mmとなります。
それ以外のテープ幅では、機械の調整で済む場合とオプション対応になる場合がありますが、
メーカーや機種によって異なりますので都度ご相談ください。
クラフトテープ・・・標準 38mm~50mm
オプション 25mm、60mm、75mm等
OPPテープ ・・・標準 38mm~50mm(輸入 36mm~48mm)
オプション 25mm、60mm、75mm等
ガムテープ ・・・標準 38mm~50mm
(標準以外(63mm、75mm等)は要相談)